臨床と研究の狭間空間

整形外科医で某国立大学の大学院で研究をしています。大学院生という立場からのブログです。

専門性の高さ

みなさんこんにちは。鋼の整形外科医です。

3か月間研修してきたとある病院と、今まで勤務してきた病院との違いについて記載したいと思います。

 

通常の病院

今まで勤務していた病院は総合病院であり、整形外科だけでなく内科や外科など多数の他科が存在し、整形外科病棟として設定されているスペースに肺炎の患者さんや脳外科手術後の患者さんが入院していることも見られます。

当然ながら病棟スタッフ(特に看護師さん)には整形外科のみの知識だけでは無く、他科疾患に対しても対応できるような知識が求められる為、一般的には数年おきに配属病棟の変更が上層部から言い渡されるケースが多いと思います。

総合病院の役割は、全身疾患を合併している患者さんに対しても安全に治療が行える環境が必要である為、何かトラブルがあった際に当該科の入院病床があることが重要です。例えば、整形外科で骨折治療を受けた方がリハビリ中に心不全になることは時々見られますが、その際に循環器病棟へ移動して治療を受けれるというのが総合病院の有利な点です。

そういった看護形態が必要になっている為、幅広く全身の疾患についての看護知識・技術が身につくことになる反面、どうしても単一科の疾患について掘り下げれないというデメリットもあります。

これは病棟に限らずオペ室にも共通することで、オペ室看護師さんは整形外科手術だけでなく消化器外科、脳外科、心臓血管外科、呼吸器外科、形成外科、耳鼻科、泌尿器科、皮膚科、眼科…それぞれの手術について準備、機械出しが求められます。

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こちらも病棟の話と同様で、広い知識が必要ですが、単一の手術に対してのトレーニングがなかなかできません。

とある病院では手術当日に「私TKAの機械出しは出来ないです」と恥ずかしげもなく言われ、衝撃を受けたことがあります(笑

 

 

今回の研修病院

総合病院とは真逆の形態と考えても良い施設です。

整形外科単科での診療(週に数日の内科外来はありますが)をしており、常勤医は整形外科数名と麻酔科医数名。

入院病床は全て整形外科疾患であり、当然ながら手術も整形外科手術のみ。

こういった環境であれば、当然ながら看護師さんは整形外科看護や手術について洗練されていきますね。

最も驚いたのが手術室運営でした。

今までの病院では患者入室、麻酔導入、体位セッティング、ドレーピング、執刀開始まで約30分から1時間前後ありますが、その間執刀医がOpe室に張り付いていて麻酔がかかるのを待っていたり、よっこらせっと体位変換して手洗いした後にドレーピングというのが当たり前でした。

この研修病院では「ドクターにしかできないこと以外は極力コメディカルスタッフでする」というスタンスで運営されていた為、執刀医が外来診察や術前後の説明などを行っている間に、麻酔科医が全身麻酔をかけ、あらかじめ指示された体位セッティングを看護師とともに行い、看護師で清潔ドレーピングをしておく。

執刀医は手術に集中し、終わり次第隣で麻酔がかかっている部屋に移り、またすぐに執刀をするという、外科医が最大限手術に集中できる環境を作っていました。

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手術のバリエーションも専門的に絞っている事が幸いしており、時には看護師さんがドクターに近いような助手もできるくらい手術内容を理解していたのも驚きました。

 

ただ、良いことばかりではありませんでした。

総合病院の逆のような環境である為、内科的合併症に非常に弱い。

肺炎や不整脈が起ころうものなら病棟は大騒ぎです。

 

 

今後の働き方に活かしたいこと

将来的に非常に参考になるモデルケースを見れたのではないかと思っています。

集客がどれだけできて、どれだけの症例が集まるかは別として、いち整形外科医として目指すべきは今回研修させてもらった病院のような専門的施設が理想だと思います。

今までの医師生活10数年で、やはり自分は手術という、外科医にしかできない治療を行っていくことが自分のライフワークとして合っていると 感じています。

その為、総合病院で多くの合併症を持った方を治療することも重要かとは思いますが、整形外科専門で診療にあたれるような環境づくりを目指したいと考えました。

どのようにしてそれを実現していくかは今後またこのブログで書いていければと思います。それでは。

 

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