みなさんこんにちは。Dr.Q太郎です。
前回、膝が腫れる疾患の<外傷編>を書いたので、今回はそれ以外について書きたいと思います。
まず迷ったのがタイトルです。
代謝性?非外傷性?とか考えましたがなんかしっくり来ないな、と思い曖昧な感じで「内因性」とさせてもらいました。
非外傷性とほぼ同義かもしれませんが、前回と同じく救急外来の当直時は外科当直の先生が診察することになりますし、時には他科入院患者さん達でも発生することがあります。
今回は内科や整形以外のマイナー科の先生達にも読んでもらって損は無いかと思います!
変形性膝関節症
今回の記事中の罹患患者数はぶっちぎりでNo.1でしょう!
ご高齢の人で膝が痛いという場合、ほとんどがこれですね。
症状は膝関節痛、時に熱感を訴えることがありますが、ほとんどがごく軽度です。
女性、O脚、肥満などは有病率が上がる要素です。
内科などの入院で時々症状が悪くなって膝痛を訴えることがあるのは、入院でのADL低下で大腿四頭筋の筋力低下などを生じる為、膝関節症症状が強くなるんですね。
当疾患の保存的治療については別記事でも記載しているので参照してもらえると分かりやすいかと思います。
レントゲンを撮影するとリンク先のような関節面の変化が生じているはずです。
基本的には鎮痛薬内服の上、後日整形外科外来受診などでいいと思います。
仮に内科入院中であれば、採血で異常が無いならよほど問題になる疾患は隠れていないと思います。
偽痛風発作
時々、他科の先生が鑑別に困っていることが多い印象ですね。
やや高齢の方で発生しやすく、けっこう痛がる上に熱感もあり、更に最も困る原因の1つが採血でCRPがやたら上昇する事でしょう。
次に書く化膿性関節炎との鑑別が必要か迷うという印象ですね。
整形外科にすぐコンサルトできる環境であればそう困らないと思いますが、休日や夜間だったりしてできる検査ならやりたいということであれば、関節穿刺が出来れば診断が付きます。
以前にTwitterでもツイートしたので参考までに貼り付けて起きます。
関節穿刺なんてできない!
— Dr.Q太郎🎤 (@mic_rophone_HG) February 15, 2019
そんなことはありません!関節腫脹例では採血取るより簡単です!
一般的に膝蓋上嚢を外側から狙うと刺しやすいです。
関節液が貯留して膨らんでいると、膝蓋骨上縁辺りから真横に刺せばスッと抵抗なく針が入ると思います。
図が雑ですが、赤印の辺りが狙うイメージです。 pic.twitter.com/Rh5lj6Lrp9
注意点は清潔操作だけで、難しい手技ではありませんので、他科の先生がしても問題ないかと思います。
少し混濁したように見えるが、膿のようなクリーム色ではない関節液が引けたらほぼ確定です。
関節液を鏡検に提出し、ピロリン酸カルシウム結晶が検出されれば確定診断です。
少し自信が無ければ念の為、細菌培養検査も出しておいて、Gram染色の結果だけ教えてもらうようにしておけば完璧です。
治療はNSAIDs内服で改善することが多く、腎機能が問題無ければ3T分3で数日内服してもらえば疼痛が消失してくることが殆どです。
ただ、いかんせん高齢者の方が多いので、副作用には気をつけましょう。(整形外科医はいつもこれで迷惑かけます)
化膿性膝関節炎
ハイ、多くの方が1番心配しているのがこれですね!
ぶっちゃけ、これ以外は翌日以降の整形外科受診で全く問題ないように思います。
可及的速やかな洗浄・デブリドマンと抗生剤投与が必要ですね。
偽痛風発作と同じく、採血上の炎症反応上昇と、局所の炎症の4徴候である関節周囲の発赤・疼痛・腫脹・熱感を伴います。
医療者であれば釈迦に説法かもしれませんが、糖尿病、担癌、ステロイドや免疫抑制剤の使用、膝関節手術既往などがリスクになります。
診断はやはり②の偽痛風発作と同じく関節穿刺が1番確実です!
医師なら関節液の性状を見てほぼ診断がつくと思いますし、これはと思った時には関節液の培養でグラム染色を至急で報告してもらえば比較的速やかに診断がつきます。
穿刺する自信が無いけど、化膿性膝関節炎を疑っている時は迷わず整形外科コンサルしてください!
肺炎などと比べて、関節内に留まっている分には初動が遅れても生命予後に影響することは少ないかもしれませんが、慢性化して関節機能を著しく損なうリスクがあります。
何かしらの理由で内科病棟入院中だと、もともと抗生剤治療していたりするかもしれませんが、もし症状出現前後で抗生剤治療が無ければ関節液培養を出すまでは抗生剤投与は控えましょう。
関節リウマチ
膝関節単独の症状であることはあまり無いので、問診で大まかに検討がつくかもしれませんね。
特に手の症状が多いです。
多関節炎、朝のこわばりなどがあるようなら疑わしいです。
これは救急外来に受診したり、入院中に急に相談されたりすることはあまり多くないと思いますので、疑えば後日整形外科外来受診の案内で問題無いと思います。
診断については内科の先生の方が詳しいかもしれませんね。
整形外科の中でもリウマチに関しては自分は専門外なのでちょっと弱いです。
AUR/EURAの2010年に作成された診断基準を貼っておくのでこれで勘弁してください笑
http://sweet-town.jp/_common/dl/fig01.pdf
血友病性膝関節症
名前を見たら分かるように、血友病が原因で生じる関節症です。
血友病自体が出血しやすい疾患である為、膝の関節内で出血が生じ、その刺激により滑膜が増殖し炎症性サイトカインの産生が増大し、関節軟骨の破壊が生じてくる疾患です。
診断は当然ながら基礎疾患で血友病があることですね。
血友病の診断がついていない時は我々、整形外科医も下記のPVNSと迷うこともあります。
色素性絨毛性結節性滑膜炎(PVNS)
あまり聞き慣れない疾患かもしれません。どちらかというと整形外科開業医の先生から「繰り返す膝関節血腫」という触れ込みで整形外科専門外来へ紹介される疾患です。
血友病のような出血素因が無い方で関節内血腫を繰り返す場合に疑います。
原因はよく分かっていませんが、増殖性の滑膜炎を示し、滑膜部分から出血することで関節が腫脹します。
確定診断をつけるには病理検査で、おおよその診断をつけるのはMRIと、繰り返す血腫という病歴がメインです。
これは緊急性のある疾患ではないので整形外科に後日受診してもらえば大丈夫です。
関節鏡視下滑膜切除術を行います。
この疾患は進行すると骨に侵食が進み、骨破壊が高度な時は人工関節置換術が必要になることもあります。
外傷の無い、内因性の膝関節腫脹を生じる疾患について記載してみました。
どうでしょうか。他にこんなのあるぞ!っていうのがあればまた教えてくださいw