臨床と研究の狭間空間

整形外科医で某国立大学の大学院で研究をしています。大学院生という立場からのブログです。

初期臨床研修病院選び

皆さんこんばんわ。鋼の整形外科医です。

そろそろ前ブログページでの名前を使わないようにしていきたいところです。

前回の記事は一般の方や5年生以下の医学生の方にマッチングシステムってこんな感じですという説明のつもりで書かせて頂きました。

今回はマッチング試験が終わり、どの病院をマッチング順位で上に持ってくるか迷っている6年生向けに記事を書きたいと思います。

今回の記事は書くことが多いので今までより少し長くなります。

 

 

 

①まずは自分を知ること!自分のタイプ別で選ぶ

どの研修病院に行くべきかは、自分がどんなタイプの人間でどういう研修をしたいかで、ほぼ決まると言ってもいいかと私は考えています。

おおまかなタイプ別で、私の独断と偏見により向いている研修病院をオススメします。

 

「目指すはハイパー研修医!」意識高い系

どれだけ忙しくてもいい、厳しい指導を受けたい、日本のトップクラスの臨床を学びたい!

そんなアナタは是非、有名ブランド病院を希望しましょう。

尚、ブログ主は有名ブランド病院での勤務は経験がありません笑

なのであくまで想像の範囲での記載だと思っていて下さい。なんなら全文章の後ろに(たぶんね)を付けて読んでください。

有名ブランド病院は全国各地から意識の高い指導医がたくさん集まってきています。そして症例数も豊富で、経験を積むにはもってこいだと思います。

研修医としての修行の場としては最も良いので、みんながみんなここに行けばいいかもしれませんが、逆にここに行ってはいけない人っているんです。

   ・意識は高いけどそれほど成績が良くない人

有名ブランド病院は研修医の同期も優秀な人材がたくさん集まってきます。その為、同期の中でも誰が優秀だとかはなんとなく話に出ることがあるハズです。

日々の勤務の他にローテート科の勉強や勉強会の準備、抄読会の準備などなど・・・非常に多忙な日々を送ることになります。

ハッキリ言って申し訳ないですが、模試で学内順位が上から1/3くらいに入れるだけの能力が無いと、研修医同期との力の差を感じてしまうことになります。

有名ブランド病院研修は諸刃の剣。せっかく2年間研修が終わっても「メジャー外科志望だったけど、同期の中で俺はダメっぽいからマイナー科でまったりやるわ」なんてなるのは勿体ない!

それなら違う病院で研修しましょう。

 

  ・体力に自信が無い、もしくは睡眠時間をしっかり確保したい人

最近の傾向として、全国の研修指定病院は研修医の当直明け勤務を禁止している傾向にあります。

しかし中にはその流れを無視しても平気な病院があります。それが有名ブランド病院です。

少々労働環境が悪かろうが研修希望の人が集まってくるからですね。

ほぼ一睡も出来なかった当直明けに仕事を継続するのは非常にツライです。

人間、そういう仕様に作られていませんから。

「俺たちが若い時は寝なくて当たり前だ!医師なら睡眠時間を削って働くんだ!」なんていう老害がいたらウ●コ投げつけてやりましょう。もうそんな昭和な考えは古いです。平成すらも終わって既に令和ですよと教えてあげましょう。

ハイパーな研修は頭も必要だとは思いますが、何よりも体力に物を言わせたもん勝ちなところも多々あると思います。

体力に自信が無い場合は少し緩めの研修をオススメします。

 

意識が高く、ここに書いた2つに該当しない医学生の方は是非有名ブランド病院で研修し、日本のトップクラスの研修で修行を積みましょう!

 

「ブランド病院じゃなくていいけど色んな手技・症例を経験したい!」バランス型

先程のブランド病院の欠点として、勤務形態がややブラックなことがあります。

そこまでハイパーなことはしたくないけど、経験は積みたい。それはごく当たり前の考えだと思います。

そしてかく言う私もそんなタイプでした。(ただ、自分の場合は整形外科に進むことを決めていたのでバランス型とは違います。)

このタイプの人達は500床ほどの規模があり地域中核病院とされている三次救急指定病院がオススメです。

私の勤務していた初期研修病院もそういう病院であり、今から10年ほど前でしたが既に研修医の直明け勤務は忙しい外科を除いて禁止となっていました。おそらく今はもっとそういう施設が増えているのではないでしょうか。

当直明けの勤務があるか無いかはQOLの質に直結します。

体力的にも当然負荷が違いますし、ちょっと銀行や役所に行く用事もまとめて済ませることができます。

仕事の体力と遊びの体力は別腹なので、直明けに遊びの予定を入れることも可能です。

直明け勤務の有無については、事務方に聞いても本当のことを教えてくれるかは分からないので、見学に行った時に研修医の先生の生の声を聞くことが重要です。

そして三次救急を頑張っている地域中核病院は症例数は十分に有るので経験が足りなくなることはまずありません。

モチロン自分での勉強をどれだけするかにもよりますが、2年間頑張ればどこでも胸を張って後期研修に臨めると思います。

ブランド病院にも当てはまりますが、研修医同期の数が多いことも大事です。

新しく科をローテートする時に、同期の誰かが以前に回っていたらローテートの注意点や仕事内容を聞くことができます。同期が15〜20人くらいいればだいたい誰かがローテ済みになってます。

また、どこかのタイミングで研修がつらくなった時に愚痴を言い合ったり、飲みに付き合ってもらう同期というのは心の支えになります。

研修医の数が少ないと、同期でイマイチな奴しかいなかった時に頼ることもできなくなります。

ある程度の経験を積みたい人は地域中核病院の三次救急病院をオススメします!

 

「マイペースにやりたい!」QOL重視!

最近は医師(研修医)の過重労働の問題が取り上げられてきており、このタイプの希望も増えてきているようです。

自分は初期研修、後期研修の次に勤務した病院が二次救急はやっているけど、常勤スタッフがやや高齢で、あまり積極的に色々やりたがる病院ではない病院へ医局人事で勤務になりました。

こう書くと自分が左遷されたような雰囲気(笑)ですが、整形外科診療に力を入れている病院で、自分の専門である膝肩班のサテライト病院だったんですね。

QOL重視の方はこういう病院がオススメです!

二次救急までであれば緊急で夜遅くまで拘束されることもほとんど無いですし、何よりも重要なことは研修医の自由がかなり保証されています。

私が勤務した二次救急病院は、研修医が少ない為、当直回数や当直に入る日は研修医の希望で選べていたようです。

私は当直の時に救急車の電話は基本的に全部取っていたので、常勤医の中では当直が忙しいと言われていたようですが、その当直に選んで入ってくれる研修医の先生はほぼ決まっていました笑

普段の仕事量も多くないので17時前後で帰れることも多いですし、研修医教育に熱心でなければ、受け持ち患者数も多くならない傾向だと思います。

私のいた病院では、整形外科をローテで回った研修医の先生に大腿骨頸部骨折術後の患者さんを1人受け持ちしてもらった程度です。(術後はほとんどやることが無い・・・)

読んでもらったら分かると思いますが、QOLは非常に保たれますが、どうしても経験できる症例は限られます。

専攻医になった時に、他科の知識がほとんど無いと困ることも時々ありますので、3年目以降はちょっと大変かもしれません。

しかし他科の体制がしっかりしている病院で後期研修をするのであれば何も問題はありません!

それと、後半でも書きますがどちらかというと金銭面で恵まれている傾向にあります。

 

 

「俺は〇〇科に決めている!」有名な〇〇科狙い

これは少し特殊な選び方です。

専門性の高い診療科があり、その科を専攻することを決めている場合ですね。

今までの経験上、学生のうちから専攻科を決めていて実際にその科に進んだ人は30%以下だと思います。

研修を回ってみて決めるつもりの人が多く、元々進む科を決めていてもなんだかんだで違う科に進む人も多いです。

自分は学生のうちから整形外科!と決めていたので、この特殊な選び方もありだったかもしれませんが、整形外科で専門的治療を売りにしているところって東海地区では名古屋を除いてなかなか無いんですよね。

研修は自由にローテートを選べる選択期間があるので、必修が終わり次第、残りの選択期間を専攻科に全振りしてガツガツ専攻科の勉強をさせてもらうというメリットがあります。

 

番外編「大学で勉強したい!/母校大好き!」大学病院

上記3つは各人のタイプ別で書いてきましたが、それと別で大学病院研修について少し書きます。

自分は今、大学院にいて大学病院も出入りしています。

ただ、臨床の場に出ている時間が少なく、研修医の先生とやりとりする場はほとんど無く、これも半分想像の範囲での記載だと思って下さい。

大学病院は市中病院では取り扱えないような難症例が集まります。

その点では有名ブランド病院を超えると思います。

そしてアカデミックな検討、議論を扱う為、深い考察などを学べると思います。

専攻医として大学での勤務を中心にしたいということを考えている人は大学病院での研修が良いと思います。

また、母校であれば学生時代の同級生が何人もいたり、ちょっと先輩・後輩と一緒に飲みに出かけたりも比較的簡単です。私の場合は大学がかなり遠方なので、同級生と会おうとするだけで一苦労です。

大学での欠点と言えば、手技などをなかなかさせてもらえないことでしょうか。

やはり難しい症例が集まることや、ある手技は許可制だったりする事などから、簡単に研修医に手技を回すことがしにくいんですね。

それと金銭面は市中病院よりも悪い傾向にあります。

 

 

今回の記事のメインはここまで書いたところです。

以下の要素はオプション的なものかなと思っています。

しかしされどオプション。車もカーナビやETCなどオプションが重要だったりします。

①の内容に加えて以下のオプションをどう組み合わせるかがミソだと思います!

 

②立地条件

これは色んな要素が絡みますが、まずは都会に住むか田舎に住むかということでしょう。

都会も東京都のような大都会もあれば、人口数十万都市まで様々です。

私の研修していた病院はせいぜい人口30万の都市でしたが、県内では1番の都会と言われていました笑

東京の人からしたら鼻で笑われますね。

ただ、立地条件という書き方をしたのが、その病院の最寄駅から電車1本で東海地区最大都市である名古屋にアクセスできたということがあります。

なので仕事が終わった後に名古屋で飲み会をしたりも可能でした。

ほぼ田舎と呼んでいいところに住んでた自分が言うのもアレですが、ハッキリ言って、研修医という若い時期を過ごすには都会である方がいいと思います。

1番のメリットは絶対に出会いの場が多いことです。

「うわぁ…やっぱ整形外科医ってすぐ女のことを…」とか思ったアナタ!ちょっと違いますよ!

別に異性に限ったことではありません。人口が多ければそれだけたくさんのタイプの同性との出会いも生まれます。自分はバンドを組んでましたが、メンバーを探すのは田舎だとけっこう大変なんですよね。

異性との出会いに関してはどちらかと言うと研修医の女医さんに重要だと思います。

男の医者は研修医の時に結婚など考えず、なんとなく出会いを探していたらいつかは結婚できることが殆どです。(ある程度の標準スペックであれば)

問題は女医さんなんです。大学入学、卒業、国家試験がストレートに終わった人ですら研修終了の頃には26歳になっています。その時に「田舎過ぎて全く出会いが無く、後期研修も同じ病院だから結婚できるか焦ってきた」という方はけっこういるのではないかと思います。

そうならない為にも、20代中盤の時期に出会いをたくさん経験しておくことは非常に重要だと思います。

 

 

 

③給料

仕事の対価として給料は非常に大事です。

金の事なんか…というのも良いと思いますが、無くて不幸になることはあっても、有って不幸になることは少ないと思います。

Twitterを見ていると、資産形成をして投資に繋げたり、早期に前線から退いて自分のやりたい仕事をしている先生も多く見かけます。

それには研修医の時からいい給料をしっかり貰い、ある程度の元手を作ることが必要だと思います。

もし金銭面を重視するのであれば、田舎の病院であればあるほど優遇される傾向にあります。

田舎過ぎると使い道に困る可能性はあるので、買いたい車があったりとか、貯蓄や投資を考えていたりする人向けだと思います。

また、前述しましたがブランド病院や大学病院は金銭的に厳しい傾向なのでこういった病院は避けるべきでしょう。

それと、研修医の当直業務に当直手当をしっかり出しているか、時間外勤務に対し時間外手当を出しているかも重要です。

医師になりたてホヤホヤの頃はどれだけ働いても嬉しくてしょうがない時期があるかもしれませんが、夜中の遅くまで手術の手伝いなどしても、それが無報酬だといつかヤル気が削がれます。

そもそも時間外勤務にたいし手当を払わないのは違法です。

労働にはそれに見合った対価が必要ですので、この辺りも是非チェックして下さい。

 

④病院の設備

これは①〜③に比べるとインパクトはだいぶ弱いと思いますが、普段の研修の快適さにつながると思います。

1番重要視すべきは研修医ルームだと思います。

研修医ルームが完全に他のドクターの医局と壁やドアで仕切られているくらいのところがオススメです。

研修中に自分のデスクに戻って一息つきたくなることもありますし、ちょっと仮眠したくなったりもします。

上のドクターがどかどか通るような場所だと落ち着きません。

また院内の愚痴を研修医同士で話したりすることもしにくくなります。

研修医ルームを区切って作っている病院は研修医に対する配慮ができているところだと思ってもいいでしょう。

他に設備として見ておくと良いのはエレベーターの配置、廊下の広さ、施設全体の色調ですかね。

エレベーターの使い勝手が悪いところは移動だけで時間を浪費しますし非常にストレスフルです。

廊下が狭かったり、病院全体がなんか暗い感じだと、憂鬱な月曜日の朝から死にたくなります。

学生の見学で触れることは難しいので評価できないかもしれませんが、電子カルテの使い勝手も地味に重要です。

見学でついたドクターが電子カルテをいじりながら「あ〜もう遅っせぇなぁ…」とかボヤいてたらクソカルテの可能性があります。気をつけましょう。

 

コメディカルスタッフ

見学の時は相手をしてくれるのがほとんどドクターだと思うので、これも評価が難しいかもしれませんが、スタッフが元気な感じで挨拶してくれるようなところは合格だと思います。

特に看護師さんの態度は今後、研修医として働いた時に直接自分に向くものです。

まぁ研修医に対して怖い看護師さんは1人か2人ほど必ずいます。

病院全体として雰囲気が良さそうかを見るのが大事ですね。

あと、男性の場合は看護師さんで若い人がいるかというのは重要な要素でしょう。

未来の配偶者になる人がいるかもしれません。

附属のような看護学校があると、若い看護師さんが毎年就職するので仕事が終わった後に研修医数人と看護師数人で飲み会をしたりしたのもいい思い出です。

 

ざっと研修病院選びで参考にしてもらえたらいいかなと思っているポイントを書きました。

いかがだったでしょうか?

実りある研修医生活の2年間になることを願っています!

 

 

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