臨床と研究の狭間空間

整形外科医で某国立大学の大学院で研究をしています。大学院生という立場からのブログです。

マレット指

皆さんこんにちは。鋼の整形外科医です。

私の専門領域は膝・肩疾患なんですが、スポーツ外傷も一応専門になるんですよね。

実は今年度こっそりと日本整形外科学会認定スポーツ医と日本スポーツ協会公認スポーツドクターの資格を取得しました。(それぞれの団体HPではまだ名簿の更新がされていません)

と言うわけで(?)スポーツで受傷することのある「突き指」で発生する、マレット指について、実体験を交えながら書きたいと思います。

 

 

分類

腱成分が損傷する腱性マレット指と、骨折を伴う骨性マレット指に分類されます。

 

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日本整形外科学会HPより

 

発生機序

最も多いのはスポーツ等で突き指をして、DIP関節(第1関節)が強制的に曲げられることで、伸筋腱が付着部で切れてしまうと腱性マレット指になり、伸筋腱の張力で剥離骨折を生じると骨性マレット指になります。

つまりDIP関節を曲がらないように固定すれば大丈夫です!(ネタ)

 

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ジョジョ第3部より

 

症状

DIP関節の疼痛・腫脹・伸展不良(他の指で伸ばそうとすると伸びる)

放置するとこのような伸展不良が残存することになります。

 

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日本整形外科学会HPより

 

治療

保存的加療

マレット装具という外固定装具を用いた装具療法になります。

指を伸展位で保つことで損傷部位の癒合を計る目的で使いますね。

基本的には腱性マレット指はこの装具療法が適応とされています。ただ、これには注意点があって四六時中装着していないといけません。一時的に外したければDIP関節が曲がらないように他の指などで保持していないといけません。

 

曲げてしまうと、癒合しかけていた組織が破綻して正常な組織の治癒が得られずに瘢痕組織が介在することになり、関節のLag(垂れること)が残存してしまいます。

また、海外では骨性マレットも装具療法など保存的加療をされていることがあるようですが、やはりLagが残存したり、関節近傍の骨棘形成(反応性に骨が生えること)を生じることが多いです。骨棘形成が大きすぎると可動域制限の原因になることがあります。

装具療法は約2ヶ月ほど行うことが一般的です。

 

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日本整形外科学会HPより


 手術加療

骨性マレット指の場合、経皮的鋼線刺入固定術が行われます。

骨片の背側に骨片をブロックするワイヤーを入れた後に、関節が動かないよう固定するワイヤーを入れる手術です。

この手術で骨片がズレてくることがなければ4〜6週ほどでワイヤーを抜去します。

一般的には腱性マレット指の場合は上記に書いたように保存的加療が行われます。

しかし例外的に保存的加療が何かしらの理由でできない場合、手術の選択肢もあります。

実は自分も右小指腱性マレット指になった経験があり、手術を受けました。

 

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受傷直後 右小指腱性マレット指

その理由としては、仕事で手術手洗いをする際に装具を外さないといけない為、不完全な保存的加療となってしまうことでした。

先程も書いたように装具を外してしまうと正常な腱の治癒が得られずLagが残存することになる為、DIP関節を伸展位で保つ目的でワイヤーによる関節固定術を行いました。

 

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マレット装具 一応トライしたものの不便でした

関節固定と言っても一時的なもので、8週間でワイヤーを抜去しその後は普通に動かせます。

その間は小指のDIP関節は伸展位から動かせませんが、それを除けば特に不自由なく使え、手術手洗いもできて装具を付けているよりよっぽど快適でした。

現在はROM制限が全く無く、非常に満足しています。患者満足度100です!(ドヤァ

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自分の術後レントゲンです

 普段から後輩の手術指導の際に「非利き手でもピンニング(ワイヤーを打つこと)ができるようにしておけ」と言っていましたが、そのお陰でまさか鋼の整形外科医先生に手術をしてもらえるなんて予想していませんでした。(←

今となっては腱性マレット指の患者さんの診察の際には、自分の経験を話して

「1本ワイヤーを入れるだけで装具不要になるからすごい快適ですよ!」とお伝えしています。

今のところ快適さを求めて手術を希望された方はいません笑

 

 

マレット指について、病態や治療方法などを書いてみました。

「腱性マレット指になったらQ太郎先生みたいに一時的関節固定してもらおう!」って思いましたよね?

え?思わない?

全然いいと思います(´・ω・`)

 

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