みなさんこんにちわ。Dr.Q太郎です。
だいぶ気温も涼しくなってきましたね。前回の記事でも書きましたが、来月から私は3か月間ほど国内の別施設にオペ研修をしに行く予定なんですね。
ひと際寒い場所の研修なので寒がりの自分には恐怖でしかありません…
ところで、その施設は肩関節鏡手術を沢山している施設で、しばらく膝関節疾患と触れることが少なくなる可能性が高いです。
医師は働く先によって扱う疾患がかなり左右されるんですよ。
なので今のうちに膝関節疾患のことを書いておこうかと思います。(こじつけ)
今回は半月板損傷について書いてみます。
半月板の機能
半月板は膝関節の内側と外側に存在し、クッション材のような役割を持っています。
コラーゲンで出来ており、やや弾力のある組織でCの字のような形をしています。
関節軟骨が動く際にスムーズに動くのを助けており、荷重による大腿骨の力を分散させつつ、膝関節を安定化させる補助をしています。
どのように損傷するか
①スポーツ外傷
若い人が半月板を痛めてしまうのはこれが一番頻度が多いと思います。
サッカーやバスケットボールで前十字靭帯損傷とともに受傷することがあります。
②関節内骨折
脛骨高原骨折や大腿骨顆部骨折の際に合併することがあります。
手術の際に関節鏡を挿入したりすることで初めて判明することもありますね。
外傷外科出身の膝関節外科医である私はこの辺りが得意ですね。
③円盤状半月板
いわゆる半月板の奇形みたいなものです。
本来はCの字をして荷重の力を分散している半月板が、全周性に丸くなってしまっている状態です。
すると、普段は存在しない部分に負担がかかり亀裂が入りやすくなるんですね。
外側半月板に発生しやすく、性別ではやや女性に多いと言われており、特に外傷なども無いのに若い女性が膝の外側を痛がる場合に疑ったりします。
④加齢性変化
以前に記載した変形性膝関節症の変化の1つとして生じることがあります。
内側半月板の後ろ側に小さな損傷を生じていたり、真ん中辺りに水平方向の亀裂が入ったりなどの形態があります。
クッション材である半月板が痛むことで徐々に軟骨への負担も増えていくことになるんですね。
治療
半月板の損傷は血流がある一部分を除いて自然治癒が得られることは少ないです。
ですので手術治療が主体になりますが、損傷の形態によって治療が変わります。
・保存的加療
上記の①〜③ではあまりオススメできません。
唯一、④の加齢性変化による変形性膝関節症の一部としての半月板損傷については保存的治療が一般的です。
この保存的加療は以前に記載した変形性膝関節症の保存的治療を参考にして下さい。
私が医師になる前は、変性した半月板を周囲の滑膜とともに関節鏡視下で切除する手術もされていた時代もあったようですが、最近では明らかに半月板損傷による症状が強い場合を除いて、積極的な適応は無くなっています。
・手術加療
現在の半月板損傷手術のコンセプトは「縫えるのであれば出来るだけ縫って修復する」という方針が全国的にもコンセンサスが得られていると思います。
関節鏡視下半月板縫合術
関節鏡視を膝関節内に挿入して、カメラで損傷の形態を確認し、関節内の処置で縫合をして治癒が得られるようにします。
最近は治癒率を高める為のオプションとして、血液を凝集させて塊にし、それを縫合部分に充填することで成績を上げる方法が選択されることもあります。
関節鏡視下半月板切除術
損傷してから時間経過が長かったり、糸をかけて修復するには断裂が中途半端に小さかったりの場合に選択されます。
損傷してしまった部位を最小限の切除を行い、疼痛の原因を除去する方法です。
長期的に見ると関節軟骨への負担が増える傾向にあるので、切除せざるを得ない場合に行います。
また、この切除術のうちの一環で、③円盤状半月板に対しては形成的切除という方法で、損傷した部位を切除しつつ、半月板をCの字に整え得てあげる術式です。
関節鏡視下半月板縫合術+脛骨骨切り術
先ほど変形性膝関節症に対しては保存的治療が主体ということを書きましたが、条件を満たしている症例に関してはこの術式が適応になることもあります。
元々、変形性膝関節症で半月板(ほとんどが内側)が損傷してくる方の下肢はO脚変形を生じてきており、内側半月板にかかる負担が増大しています。
この状態で半月板を縫っても再断裂を生じることが多いのです。
それを防ぐ為に、内側半月板を縫合するだけでなく、骨切り術を併用することで、膝内側にかかる荷重を減らし膝関節機能を維持する治療です。
この術式を行うのは半月板が縫合可能、軟骨変性が少ない、内反が骨切りで矯正可能な範囲であることなど、ある程度の条件があります。
以前の記事に比べてちょっとずつ専門的な話が多くなってきて少し難しくなってきているような気がしてきています。
自分としてはなるべく簡単でコンセプトが分かりやすい文章を心がけているんですが、どうしても手術の話になってくると難しい単語を使わざるを得なくなりますね。
ブログのここが分からない!などあれば、すぐに返事はできないかもしれませんがコメントやツイッターなどで質問してくれても結構です。
個人の疾患についての相談は診察をしないことにはなんとも言えませんので、お答えできないと思います。
ではまた。