どうもこんばんわ。鋼の整形外科医です。
前回書いた記事の通り、少しずつこちらに引っ越ししていくつもりですが、ブログのユーザー名も今は2つ混在していますが、徐々に移行していくかもしれません。
さて、整形外科をしていると、中高年辺りの方で多い悩みが膝痛。
その原因の1つである変形性膝関節症について簡単に解説を書いてみます。
内科的疾患や、外傷などの原因が無いものを「原発性」変形性膝関節症と言います。
要するに長年の使用により関節軟骨が磨耗し痛みの原因になります。
健常な関節軟骨は関節を動かす際に非常にスムーズに滑る事ができます。
軟骨は様々な要素で徐々にすり減っていき、最終的に骨が露出してくる程になる事もあります。
病期分類
変形性膝関節症の病期分類としてKellgren-Lawrence分類(K-L分類)がよく使用されます。
関節の軟骨磨耗が大きいstageⅢやⅣは骨が直接擦れるような状態です。
骨が擦れると言われても痛みを想像しにくいかもしれませんが、例えば両足首の内くるぶしどうしをゴリゴリ擦ってみて下さい。
もしくは拳を握り込んで骨ばったところどうしでゴリゴリしてみて下さい。
痛いですよね?
更に体重がかかるのでもっと痛いはずです。
こういった状態は関節機能を戻すことが難しい為、人工関節置換術などの手術適応になってきます。
保存的治療
手術治療についてはまた別記事で書こうかと思いますが、本日は保存的治療について説明します。
要するに手術以外の治療ですね。
①減量
減量はかなりの効果があります!
「膝が痛くて受診したら痩せろと言われた」と不機嫌になる方もいますが、残念ながら肥満は膝の天敵です!
日常診療をしている体感としては、(身長cm)-(体重kg)<100の方は変形性膝関節症の頻度が少ないもしくはあっても軽度ということが多いです。
当然ですが支えるべき体重が重ければ軟骨への負荷が多くなり軟骨変性の進行が早くなります。
軟骨は再生しない組織です。
長持ちさせる為にも痩せましょう!
②筋力訓練
「膝が痛いので運動を辞めてしまった」ということを時々聞きますが、実はコレ悪化の原因の1つです。
太ももに大きな筋肉がありますよね、これは大腿四頭筋という筋肉ですが、膝関節を支える重要な筋肉であり、大腿四頭筋筋力の向上が変形性膝関節症の症状緩和・進行防止になります。
具体的にどうしたらいいか?
今この記事を読みながらでもテレビを観ながらでもできる筋力訓練をして下さい。
足を伸ばしてぐっと持ち上げる運動は関節への負担も無く簡便にできる運動として推奨されています。
ほら、今まさにやってみましょう!
自分は外来で患者さんに片足につき1日50〜100回やりましょう!と伝えています。
モチロン毎日ですよ!
他にもスイミングや軽いウォーキングなども有効です。
痛くてウォーキングが出来ない!そういう方は次の手段を…
③鎮痛薬
なぜか内科の薬は皆さんちゃんと飲んでくれますが、整形外科で出される薬は嫌われています。
副作用があるからイヤということですが、どんな薬も副作用はあります。
「薬」って反対から読むと「リスク」なんですよ笑
副作用のリスクを上回るだけのベネフィットが得られるので我々整形外科医は鎮痛薬を処方します。
もちろん、漫然とした長期投与は良く無いのでどういう薬が適しているかを判断しながら処方しています。
「でも鎮痛薬って一時しのぎでしょ?」と言われることがあります。
その一時しのぎが大事なんです。
今痛くて運動できないんですよね?運動できないから太りませんでした?
痛みを抑えているうちに運動し、筋力を改善させて減量できるということを目指しています。
痛み止めは嫌だという前に、一度試してみてください。
どうしても副作用が出る場合は内容を調整していきますので主治医にご相談を!
④ヒアルロン酸関節注射
関節内は非常にヌルヌルっとした関節液があります。
関節液は関節軟骨が滑るのに役立っています。
その滑りを良くする為にヒアルロン酸を関節内に補充してあげるということです。
「○潤や⚫️ルコサミンを飲んでるから大丈夫」という方もいますが…
基本的に経口摂取してもこれらが腸管からほぼ吸収されておらず、関節内にまで届いていません。
高いお金を払ってこういった物を購入するくらいなら美味しいものでも食べましょう。
一般的にヒアルロン酸注射の効果は1週間前後と言われています。
疼痛が強い炎症期の場合は1週おきに5週間ほど続けて注射をすることで症状緩和を目指すことがあります。
⑤装具
アーチサポートや足底板といった物です。
いわゆる靴の中敷きのような物ですね。
足の部分で体重のかかりを調整することで痛みの症状をコントロールする目的です。
初期の変形性膝関節症に有効と言われますが、末期関節症の場合はあまり効果がありません。
おおまかにこれらの手段を駆使して変形性膝関節症の保存的治療をしています。
それでもどうしても痛みがコントロールできない方の場合、手術治療を検討するという方針になっていきます。
手術加療についてはまた後日、別記事を書かせてもらいますね。
膝が痛いご家族がいたら一度このブログを勧めてあげてください(^^